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よしかわも田植えの季節 2)田植え

よしかわも田植えの季節 2)田植え

5月10日の記事の続きです。

田植えの日がやってきました。
作業は早朝、育苗箱をトラックに積むところからスタートします。
広い圃場への田植え場合、何度もいったりきたりを繰り返しての運搬になります。

苗の搬送


育苗ハウスから苗を運搬すると、こんどはそれを田植え機にセットします。
↓下の写真はセット開始直後のもの。

よしかわ田植え1

圃場には既に4月のうちに籾殻を腐熟させた土壌改良剤(堆肥)を施し(こちらのエントリーをご覧ください。)、
苗の移植に適した土塊の大きさに土を砕く「耕起作業」(他にも、前年の稲の茎や根、雑草などを土の中にすき込んで腐熟を促進させたり、土の中に空気を入れて乾燥を促進し、有機態窒素を無機化させる(乾土効果)等の意味があります)や、
耕起した水田に水を入れて行う「代掻き」を済ませてあります。
また、地面を水平に保つ「均平作業」も重要。水田では水を蓄えて水稲を作りますが、圃場が凸凹だと、凸の部分には雑草が生えやすくなり、凹の部分では苗が冠水したり、圃場全体の排水がうまくできくなったりしてしまうようになるからです。圃場内の水深のムラは生育のムラにもつながります。

要するに田植えの前には、稲が育ちやすく、また育てやすい条件をすべて整えておくわけです。
このような作業は基本的には皆昔ながらのものですが、今の科学に照らしても化学的にも、植物学的にも、微生物学的にも合理的そのもの。生態系やエコロジーなどの観点からも納得できるものです。
昔科学の知識などなかった時代に、鋭い観察力と経験の力だけでこのようなシステムを作り上げた先人には、頭が下がるばかりです。さらに言えば「水田」というシステム自体も画期的な優れた発明でした。陸稲を含め殆どの作物が連作障害を起しますが、水田は水をためることによって土の中が酸素不足になり,稲に害をもたらす微生物や菌類が生きられないこと,また水によって有害な物質が洗い流されるため連作障害が起きず、きちんと圃場の手入れをしてさえいれば、毎年健全な稲を育てることができるからです。あたりまえのように食べているお米は、水田という優れたシステムがあってこそなのです。

よしかわ田植え2

↑上は田植え機で田植えを行っているところ。
よしかわでは田植えの際、苗の間隔を広く開けて植えます。
一坪当たり40~50株。昔は1坪70~80株を植えていました(現在でも同様に育てている地域もあるようです)が、間隔を広く開けて植えることで風通しがよくなり、根本まで光が差すようになって、稲は分けつが良くなり、また根も広く長く伸び、茎は太く穂が長く育つようになります。

田植え機では、50アール(5000平方メートル)の田圃を2時間で植えることが出来ます。
その昔、手植えの時代には「一人一反(=約991.7平方メートル=約10アール)植えられれば一人前」とされていましたから、この50アールは、昔なら5人がかりで丸一日かかった面積ということになります。

よしかわ田植え3


↑上は田植え直後の苗の様子です。水はごく浅く入れてあります(浅水管理)。田植え直後の苗はまだ根が短く、土にしっかり根づいて(活着して)いません。水を深くしておくと、風が吹いたときに大きな波が立ち、苗が倒れてしまったり、抜けてしまったりするので、それを防ぐことが目的です。また、水が浅いと昼には水温が高くなり、夜には低くなって日格差が大きくなり、それが根の生長や分けつを促してくれるという効果があります。稲の初期の生育には水温の管理が重要で、これから先ずっと、生長の段階や気温等の状況に応じて水の量を調節していくことになります。


苗についてお話した前回、苗作りをお酒の麹造りに例えましたが、お酒作りと米作りはとても似ています。麹菌の性質をよく観察して知り、麹が上手く生育する条件を整えコントロールするのが酒造りなら、稲の性質をよく観察して知り、稲が上手く生育する条件を整えコントロールするのが米作り。よしかわは昔からの米どころであり、元禄時代には27の集落すべてに酒蔵があったほどの酒どころ。春から秋にかけて一生懸命お米を作った昔のよしかわのお百姓さんが、冬にはお酒を造ったのはもっともなこと。お米をしっかり育てるための観察眼と技術、そして“もっと美味しく”という工夫が、そのまま酒造りに活かせたのでしょう。むしろ酒造りは米作りに似ている、と言ったほうが良いのかもしれません。

よしかわ田植え4

↑田植え後の圃場の景色です。背景は霊峰、尾神岳。
尾神岳のブナ天然林に降り積もる雪の雪解け水が、
尾神岳の中の鍋状の岩盤に溜り、それが湧水となって、一年中よしかわを潤します。
その湧水が米を育て、同時にお酒の仕込み水となります。
幸い雪の多かった今年は、夏の水不足の心配なしに米作りができます。

何十年前・何百年前の農家が見た田植え後の景色もほとんど今と変わっていなかったでしょう。
この景色を見るたびに、同じ景色を眺めたに違いない、
何十年前・何百年前の人たちのお米作りの知恵に思いを馳せてしまいます。
いろいろな人のいろいろな経験と智恵の集積が、今のよしかわの高度な米作りそして酒造り。
農家一人ひとりの「もっと美味しく」という執念とトライアンドエラーの実践が、
今の米作りや酒造りを成立させたのです。
私たちの世代も「もっと美味しく」へ向けて、
未来への遺産を作らなければ。
田植え後の田圃を眺めていると、むくむくとそんな気持ちがわきあがってきます。


越後よしかわ杜氏の郷
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Author:toujinosato
上越市吉川区の蔵元です。
永田農法で最高品質の酒米を育て、地元のブナ原生林の湧水を使い、江戸時代から続く吉川杜氏の技術で、米・水・技術すべてが100%地元産の「真の越後地酒」を作り、味噌・醤油、蕎麦などの伝統食品やジェラートなど、よしかわの美味しさを発信しています。

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